鬱病は他人事ではない
人材関係の仕事をしていれば、世の中にどれほど鬱病患者が増えているか、思い知らされます。鬱で仕事を辞めた人・薬を飲みながら仕事を続けている人が登録に来るケース。あるいは企業からの急な求人の背景が、鬱病による休職というケース。中には、就業中の派遣社員が、ある日突然会社に行かなくなったケースもあります。それは私が担当していた派遣社員でした。非常に明るく、誠実で頑張り屋さんの青年。職場の信頼も厚く、最初は事故にあったのではないかと探し回りました。1人暮らしのマンションを何度も訪ねましたが、応答はありません。緊急連絡先として聞いていたご両親に連絡をすると、「鬱が再発したのだと思います」と言われ、愕然としました。
彼が勤めていた企業は、私が派遣社員として紹介した人物が正社員になっていて、なにかと内部情報がわかりやすい状況でしたが、どうして彼がそんなことになったのかは、全くうかがい知ることができませんでした。前の週まで、彼はいつもと変わらず元気に出社していました。彼が鬱病だと疑った人は1人もいません。私も、彼の明るさが「から元気」だとは思ってもみませんでした。どうして気付かなかったのか、逢うたびに「僕のことは心配しなくていいですよ」と言ってくれたのは、SOSのサインだったのか。1人で、ぎりぎりまで悩み苦しませてしまったこと、悔やんでも悔やみきれません。人材エージェンシーで働いていて、一番辛い経験でした。
また、職場の同僚が鬱になるという経験もしたことがあります。その人は、肉親の死をきっかけに発病してしまいました。いつも優しく、にこにこしている男性でした。忌引きの期間が終わっても出社しないので、まだショックが大きいのだろうと思っていたのですが、私たちが気がついた時には、もう家から一歩も出られないほど悪化していました。私の先輩が何度も病院にいこうと説得し、予約まで手配して同行しました。1人暮らしで発病した場合、このくらい周囲が干渉しないと、治療にさえ進めません。
もはや、鬱病は他人事ではありません。いつもとなりで仕事をしている人が、突然会社にこなくなるかもしれません。それどころか、あなた自身が発病するかもしれません。どうして鬱になってしまったか、を追求するよりも、これからどうしていくか、周りの人が支えてあげるべきです。鬱には誰でもかかる可能性があります。そのかわり、治すことができる病気です。もしあなたの周りに鬱に苦しむ人がいれば、どうか手を差し伸べてください。拒絶されても、手を差し伸べ続けてください。
