鬱病からの転職・再就職
鬱病は、本当に苦しい病気です。目に見える症状がない分、周囲からもなかなか理解してもらえません。不眠の辛さは、眠れない夜を何度も過ごした人にしか理解できないのと同じです。
私には忘れられない人物がいます。その人はWebデザイナーでした。私が出逢った時には、専門学校の非常勤講師をしながらフリーランスをしていましたが、正社員での就職を考え始めているところでした。Webデザイン業界は深刻な人手不足です、すぐに就職が決まりました。彼のフリーの仕事が整理できるまでは、派遣社員という不定期勤務の契約でした。勤務が始まると、彼は目に見えて痩せはじめ、どんどん精気がなくなっていったのです。フリーの仕事が片付かず無理して徹夜作業をしていると聞いていたのですが、ある日「実は鬱病なんです」という告白を受けました。
以前の職場を鬱病で退職し、時間の都合がつきやすいフリーランスになった、というのが本当の事情でした。薬の量が減り、落ち込む日も減って、これならまたフルタイムの仕事ができるだろう、と思い正社員を希望したのです。ところが、やはり知らない職場での仕事に精神的な負担が増え、また不眠が始まってしまったのです。
私にこの告白をするのにも、かなりの勇気が必要だったと思います。私は多くの人物に出逢ってきましたが、彼はその中でも飛びぬけて誠実で優しい人です。彼のような人がこんなに辛い病気に苦しむのは、理不尽に思えました。でも、鬱病は不治の病ではありません。治療法も、周囲の理解も高まってきています。彼も、症状の一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきました。正社員という言葉のプレッシャーが悪化につながっていたようですので、長期派遣契約に切り替え、できる限りのバックアップを行いました。簡単な道のりではありませんでしたが、彼は我慢強く一歩一歩進んでいったのです。
鬱病の症状が落ち着き、再び働くことができるようになる時は、精神的にとてもきついようです。「もう大丈夫だと思ったのに、うまくいかなかった」「また再発しそうで怖い」と、再び落ち込んでしまうケースが、彼だけではなく多々ありました。それでも行動を起こした分だけ、周りは変わっていきます。とても前に進んでいるとは思えないような時でも、立っている場所は変わっています。やってみることに、無意味なことなどひとつもないのです。
私は彼に言い続けました。「もう充分自分を責めたでしょう。今日は自分を褒めましょうよ。朝起きられて偉いなあ、会社に行こうと思うなんて偉いなあ、って。できないことがあっても、いいじゃないですか」再び働こう、と考えるだけでも、すごいことです。簡単にクリアできる壁ではありませんが、挑戦する価値はあるはず。今日も「やってみようと思うなんて、自分は偉いなあ」と思って一歩踏み出してみてください。
