焦らないことが肝心
私は一般の人よりも、多くの人生について触れています。何百、いえ何千という履歴書に目を通し、実際にお会いしてその半生についてお話を聞いてきました。私がお会いしたのは、既にどこかの企業で活躍している人ばかりです。中には5回以上転職を繰り返している人や、拠点を数カ国に渡って展開している人もいましたし、まるでドラマのように波乱に満ち、聞いているだけで時間が経つのも忘れてしまうお話もありました。
ほとんどの人は、当初自分が願った未来とは違う現在を過ごしています。やむを得ない事情や、会社の勝手な方針などで「こんなはずでは...」という事態は、どんな人にも存在します。けれど、ビジネスマンとして活躍している人は、それさえも糧にして成長を遂げています。
多くの人に触れて私が感じたことは、自分が想像していなかった事態こそが、その人を成長させるのだ、ということです。例えば希望に反する辞令を受け、「希望はしていないが、精一杯やってみよう」とすぐに考えられる人はあまりいません。数ヶ月、中には数年、納得できない思いを抱えながら仕事をしていた、という方もおられました。けれど、そうした迷いや苦悩があったからこそ、後々の成功に繋がるのです。
ある男性は、人事希望で入社したにも関わらず、営業に配属され、しかも全く成績が上がらずに苦しい3年を過ごしました。全てを変えたのは一本の電話です。周囲の営業マンは皆外出しており、彼が一旦話を聞きに訪問しました。それが大型受注へ繋がり、成績は急上昇。最優秀営業マンにも選ばれたほどです。もしその日、彼以外の営業マンがいたら、と考えてしまいがちですが、実はそうではありません。ご本人も謙遜して「自分はラッキーなだけでした」とおっしゃっていましたが、本当に注目すべきなのは、最初の訪問で顧客の気持ちをつかみ、大型受注へつなげた彼の手腕です。彼は3年間、後輩にも成績を抜かれるという辛い期間も、「営業は向いていない」と思いながらも、こつこつと努力し、スキルを磨いていたのです。
この時間を乗り越えた忍耐力、継続力は注目すべき能力です。彼はその後、組織の再編などがあり、念願の人事部へ異動になりました。自分の経験があるからこそ、誰に対しても性急に結果を求めない、とても良い人事担当者です。もしも最初から人事部へ配属されていたら、今日の彼はなかったような気がしてなりません。
会社組織の中では、自分の希望が通らないことは多々あります。けれど、人生においては、無駄なことなどひとつもありません。ほんの少しで構いません、前向きな気持ちを忘れないでください。
